EBM-科学的論拠に基づいた治療

 EBMとはEvidence Based Medicineの頭文字をとったもので日本語訳としては『科学的論拠に基づいた治療』とされています。現在,医学・歯科医学の急速な発展に伴い,歯科の治療のみではなく様々な病気に対して複数の異なった治療法が発表されていることは珍しいことではありません。この様な状況になると,ある病気に対する治療方法として,はたしてどの方法が最も効率的で有効であるのか?・・・という問題について客観的に考えなければいけないのは当然のことであると思います。

 しかしながら,従来の臨床医学の研究では残念なことに,研究中の新しい治療方法の有効性について,その他の治療方法と,あらゆる手段を講じて,その治療効果について比較検討することは稀であったのです。せいぜい,何も治療しなかった場合に比較して,どの程度の改善が得られたのか?という情報くらいしか調べられていなかったことも多いようです。

 これは,どう言う事かといえば,同様な効果がある他の治療方法と比較して,これから処方しようとする治療方法がどれだけ有利であるか?・・・という客観的な情報が乏しいか,あるいはまるで無視されているということです。例えば,民間療法と呼ばれているものの多くはこの手順を踏んでいないため,その効果を客観的に判定することが困難であると言えます。そこで新しい治療法を導入されるにあたり,以下のような研究がなされているかどうかが,一つの目安となっています。

  1. 基礎医学の充分な裏付けがあるか?
  2. 動物によるシミュレーションがきちんとなされているか?
  3. 実験の判断基準としてのコントロールが適切に設定されているか?
  4. 他の同様の効果を持つ治療法と適切に比較されているか?
  5. 単独の症例報告よりも,複数症例が治療成績に実績のある複数施設にまたがり充分な検討がなされ,成功率と失敗例について適切な考察が得られているかどうか?
  6. 世界的に見て信頼のおける研究機関による報告があるか?
  7. 副作用あるいはデメリットについて盲検されているか?

 こういった考え方は,現在,徐々にですが医療の世界を席巻しつつあります。そして,残念なことではありますが,新しい治療法にかかる費用はおおむね高額になる事も多いので,経済的に有利な治療を選択することも重要な要素となります。患者さん一人一人にとっては一度しか受けることの出来ない治療を複数の選択肢から選ばなければいけませんので,私たちは上記の条件に当てはまる妥当性のある治療方法を個々の患者さんについての診断より選択します。その論拠と共に治療計画を立案し説明させていただいております。そして,最終的にその話を聞いて決定するのは他ならぬあなた自身なのです。

文責:廣瀬哲之 2001/03/16